mmbi、ISDB-Tmm方式の携帯向けマルチメディア放送を紹介


マルチメディア放送の石川氏

 マルチメディア放送(mmbi)は、ISDB-Tmm方式の携帯電話向けマルチメディア放送のサービスイメージを公開した。

 ISDB-Tmmは、携帯電話などで採用されているワンセグ放送(ISDB-T方式)を発展させた携帯機器向けのマルチメディア放送規格。「ISDB-T」から「ISDB-Tmm」と、規格名称にマルチメディアを意味する「mm」が付いた。これにより、放送波を利用してデジタルコンテンツを不特定多数に配信し、ユーザーが蓄積されたコンテンツを楽しむといった従来のテレビ放送とは異なる楽しみ方ができる。

 携帯機器向け次世代放送は、テレビ放送がアナログからデジタルへ移行した跡地、つまり、現在アナログテレビ放送が使っている周波数帯を使って、2011年7月以降に開始される予定となっている。監督官庁の総務省では、ISDB-Tmmと米クアルコムが開発したMediaFLOの2方式がいずれも技術要件を満たすと公表している。

 なお、NTTドコモとソフトバンクモバイルはISDB-Tmm方式の導入を目指しており、MediaFLOはクアルコムとKDDIらが推している。

mmbi石川氏、「新しい感動を」とアピール

 mmbiは、ドコモやフジテレビ、日本放送、伊藤忠商事、スカパーJSAT、日本テレビ、テレビ朝日、TBSホールディングス、電通、住友商事らで構成された、ISDB-Tmm側のマルチメディア放送推進会社。代表取締役社長はドコモから出向している石川昌行氏が務めている。

 今回のデモンストレーションに先駆けてスピーチした石川氏は、マルチメディア放送において「新しい感動を届けたい」と語った。同氏は最大の特徴を「ファイルキャスティング」であるとして、放送波を利用してユーザーが好みのコンテンツを蓄積することで、時間や場所の制約を受けずにコンテンツが楽しめるとした。

 また、ワンセグのようにストリーミング放送も提供できるとしており、ある時間帯はファイルキャスト、ある時間はストリーミングを手厚く提供するなど、柔軟な対応が可能であるとした。たとえば、オリンピックなどの時期であれば、マルチチャンネルのストリーミング放送に集中し、各競技場で開催される種目の放送が可能とした。

 ファイルキャストの機能ではコンテンツに★印で満足度が付加可能で、この蓄積によってユーザーの好みなどを学習し、将来的にはユーザーの好みに合わせたコンテンツの蓄積配信などに繋げていくという。こうしたレコメンドの機能はさまざまなコミュニティサービスと連携させ、「各ユーザーが欲しいと思うものを我々が提供できるよう、トライしていきたい」(石川氏)という。



デモンストレーション

 今回は、207.5MHz~222MHz(現行10chの一部と11~12ch)、14.5MHz幅を使って、33セグメント放送の試作変調器によるデモが実施された。33セグメントを一括送信し、13セグメント受信機(フルセグチューナー搭載機)で2ch同時受信のデモが公開されたが、こちらは微弱電波で配信された映像が著作権をクリアしておらず、映像の写真撮影は許可されなかった。放送に使われた映像は、720×480ドット、30fps程度で2Mbps程度で配信されているという。

 もう1つのデモは、HTC製のAndroid端末「HT-03A」を利用して、加速度センサーを利用したユーザーインターフェイスを披露したもの。傾き操作などでコンテンツが操作可能だったほか、無線LAN機能と連携させて、携帯端末側で見ていた映像を途中からテレビに切り替えて視聴するデモなども紹介された。


33セグメント放送デモ。左からスペクトラムアナライザ、33セグメントOFDM変調試作機、13セグメント試作受信機×2試作機中央のアンテナから微弱電波を吹いて、試作受信機に映像を表示
デモ概要33セグメントの周波数配置イメージ


囲み取材

 なお、今回の説明会では、質疑応答の時間が用意されず、デモ披露中に担当者に逐次質問する形がとられた。囲み取材において石川氏は、マルチメディア放送の利用者数の想定について、サービス開始から数年で1000万人という目標値を示した。コンテンツは月額数百円程度となる見込みで、携帯電話事業者の料金回収代行サービスなどの利用を想定しているとした。

 また、MediaFLOとの違いについては「技術方式としてはどちらもクリアしている」と話し、技術の優位性は変わらないとの見方を示した。免許の割当については「ベストを尽くす」というに留まったが、エリアカバーや新規性などが比較対象になると見られる。なお、mmbiのほかの担当者は、MediaFLOが米クアルコム開発に対して、ISDB-Tmmは国産の技術であることをアピールしていた。

 石川氏は、蓄積型のコンテンツは映像だけに限らずデジタルコンテンツであればなんでも放送波で提供できるとし、電子書籍や雑誌、ゲームなどを一例として説明した。携帯電話などで採用した場合の連続視聴時間については、5~6時間との目安を示した。コンテンツ1本あたりは、映像の場合に70~80MB程度(10分間)になる見込み。

 このほか、mmbiの担当者は、SIMカードにB-CASカードの機能を搭載し、フルセグ受信を可能にすることなどを語っていた。

コンテンツを評価評価後にメールでレコメンドできる。Twitter連携も検討中という。ただし、放送波を使ってTwitterや2ちゃんねるなどを流すことは放送事業とは馴染まないと話していた

 



(津田 啓夢)

2010/3/8 19:32