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アシスト機構で使いやすさを考えたスライド式ケータイ「W22H」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2004年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


W22H

 au/日立製作所『W22H』。サイズ:51×115×27mm(閉じた状態)、142g。ビンテージレッド(写真)、プレミアムシルバーをラインアップ
 昨年来、折りたたみデザイン以外の端末が増えているが、なかでもスライド式デザインの端末は予想以上に機種数が増えている。au初のスライド式ボディを採用した「W22H」はその独特のフォルムで注目を集めている端末だ。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。

【この端末のチェックポイント】

  1. au初のスライド式ボディ
  2. 基本機能
  3. こんなユーザーにおすすめ


au初のスライド式ボディ

 2000年からの数年間で、国内のケータイが一気に折りたたみデザインに移行したのは、記憶に新しいところだ。しかし、昨年あたりから少しずつ折りたたみ全盛にも変化が見え始め、折りたたみデザインをベースにした「二軸回転式」、液晶ディスプレイを前面に露出した「回転式」や「スライド式」など、新しいデザインの端末が登場している。なかでもスライド式デザインの端末は、急速にバリエーションを増やしている。

 今回紹介する日立製作所製端末「W22H」は、au初のスライド式ボディを採用した端末だ。auはW22Hの発表後、三洋電機製「W31SA」、ソニー・エリクソン製「W31S」と矢継ぎ早にスライド式ボディの端末を発売している。au陣営における日立製端末と言えば、cdmaOne初期のC201Hをはじめ、常に最先端の端末を開発してきたことで知られる。しかし、昨年、カシオ計算機と開発部門を統合し、現在はカシオ日立モバイルコミュニケーションズが開発を担当している。昨年初に発売されたW21Hは、カシオからのOEM供給という印象が強く、実質的には今回のW22Hがカシオ日立モバイルコミュニケーションズによって開発された最初の日立製端末ということになるのだろう。

 W22Hの特徴は、やはり、何と言ってもそのスライド式ボディと独特のフォルムだろう。開発陣のインタビューでも語られていたように、ミュージックプレーヤーやEZチャンネルの映像コンテンツなどを楽しみやすくするために、液晶ディスプレイを前面に露出したスライド式ボディを採用したという。ボディはやや大ぶりな印象が残るが、内蔵される部品ギリギリのボディを作るのではなく、オリジナルデザインのフォルムを活かしながら、製品化したという。

 スライド式ボディの端末は、折りたたみデザインの端末とは違った利用スタイルが魅力のひとつだが、従来のスライド式ボディの端末も実際に使ってみると、慣れが必要に感じられる面がある。W22Hでは他のスライド式ボディの端末に見られた不満点を感じさせないように、いろいろな工夫をしている。まず、W22Hではスライドを開く動きを軽快にするためのアシスト機構が内蔵されており、ボディ上部を軽く押すと、開くようにしている。同様の機構はNTTドコモのD901iなどでも採用されている。


スライド サイドキー
 方向キー部分を傾斜させるだけでなく、上下ボディの合わせ部分も傾斜させることで、より段差を少なくしている  端末を閉じた状態では右側面の[終了]ボタン、[クリア/マナー]ボタンを操作する

 また、スライド式ボディでは端末を開いた状態でメールなどの文字入力操作をするが、構造上、ボディ上部とテンキー部に落差が付いてしまうため、漢字変換操作などで指の移動量が増えてしまう。そこで、W22Hはボディ上部の方向キー部分を傾け、指の移動量を減らしている。さらに、上下のボディの合わせ部分を傾け、端末を開いたときの段差を一段と少なくしている。こうした構造面での工夫は、現在のスライド式端末で最も優れていると言っても過言ではないだろう。

 ただ、スライド式ボディ上部の方向キーは、漢字変換時の下方向こそ、押しやすいものの、上方向はスペースが狭く、やや押しにくい。スライドを閉じたときの[終了]ボタン、[クリア/マナー]ボタンが右側面に装備されているのも操作に慣れが必要な点だ。ちなみに、端末を開いたときはテンキー部に装備されている[開始]ボタンや[終了]ボタン、[クリア]ボタンで操作が可能だ。


ロック

 センターキーの長押しでクローズ状態の誤操作防止ロックが掛けられる。ただし、ロックが有効になるのは待受状態のみなので、注意が必要だ
 クローズ状態での誤操作防止は、中央のセンターキーの長押しでロックが掛けられる。ロックされた状態でもスライド式ボディを開けば、操作ができるようになるため、通常はロック状態で利用するのがおすすめだ。ただ、ロック状態で端末を開き、メールやEZWebの画面を表示したまま、端末を閉じると、ロックされない状態になってしまう。おそらくメーカー側の考えによるものだろうが、ユーザーは待受画面に戻った場合のみ、端末を閉じれば、ロック状態に復帰することを覚えておきたい。

 また、スライド式ボディの開閉に応じて、端末を動作させる「オープン設定」という機能も搭載されている。たとえば、クローズ状態でメールを表示したとき、端末を開くと返信画面が表示され、着信履歴を表示した状態で端末を開くと、発信するというしくみだ。なかなか便利な機能なのだが、発信については不用意な発信を防ぐために、電話番号を入力し、発信を待機した状態に留めておいた方が良かったのではないだろうか。


基本機能もチェック

 前述の通り、昨年、日立製作所とカシオ計算機は端末開発部門を統合し、カシオ日立モバイルコミュニケーションズとして、開発を行なっている。NTTドコモのパナソニックとNEC、富士通と三菱電機の関係よりも密接に関わっているという。そのため、今回のW22Hはユーザーインターフェイスを中心とするソフトウェアとして、従来のカシオ製端末のリソースが継承されている。


メニュー ランチャー
 分割アイコン表示のメニュー画面。お好みアイコンでカスタマイズ可能。リスト式のメニュー画面も用意されている  方向の上を押すと表示される待受ランチャー。並べ替えや表示のカスタマイズはできない

 メニュー画面は12分割のアイコン式を採用し、アイコンのカスタマイズにも対応する。カスタマイズ用のアイコンデータは日立製作所の公式サイト「日立ケイタイFanサイト」からダウンロードすることが可能だ。方向キーは上方向でEZチャンネル、EZナビウォーク、EZwebなどのメニューが呼び出せる「待受ランチャー」、下方向で電波OFFモードを呼び出したり、ユーザーが自由に機能を登録できる「待受ショートカット」を呼び出すことができる。待受ランチャーは好みが分かれるところだが、待受ショートカットは使いたい機能をすぐに呼び出せる便利な機能なので、ユーザーは上手に活用したいところだ。ちなみに、筆者はカレンダー機能を登録している。

 メールはフォルダによる管理、メールアドレスや件名、アドレス帳グループによる自動振り分けに対応する。条件設定後の再振り分け、フォルダの並び替えなどにも対応する。文字入力については推測変換にも対応しているが、スライド式ボディを採用している割には入力がしやすい。


カメラ

 背面上部に124万画素カメラを装備。AF機構はないが、4枚構成のレンズのおかげで、写りは良好な部類に入る
 背面に内蔵されたカメラは端末を閉じた状態でも利用でき、メニュー画面、もしくは右側面のカメラキーで起動することが可能だ。画素数は124万画素、オートフォーカスは非搭載という標準的なスペックだが、実際に撮影してみると、思いの外、よく撮れる印象だ。開発元によれば、レンズが4枚構成になっているため、他のメガピクセルクラスのカメラ付きケータイよりも仕上りが良いという。余談だが、au design projectのPENCKにはW22Hと同じカメラが採用されている。

 撮影機能については、シーン別撮影、最大サイズ撮影時にワンタッチでメール送信画面に移行できるところなど、使い勝手の良さで定評のあるカシオ製端末の仕様をほぼ継承している。撮影した画像はサムネイル、もしくは一覧形式で閲覧でき、最大サイズ(1280×960ドット)で撮影した画像をVGAサイズや壁紙サイズなどに変換したり、切り抜くといった画像編集機能も利用できる。このあたりはカシオ製端末A5403CA/A5406CA/A5407CA/PENCKなどとほぼ同等と考えて良い。


サムネイル 画像編集
 撮影した画像はサムネイル形式及び一段形式で閲覧可能。読み出しも比較的速い  リサイズや切り出し、回転など、画像編集機能も充実している

サンプル
 SXGAサイズで撮影したサンプル画像。JPEG回転させている。リンク先は無加工。(モデル:篠崎ゆきスーパーウイング所属)

プレイヤー

 プレイヤーではテンキーの[0]ボタンを押すと、カメラのファインダーと同じように、オンラインヘルプが表示される
 着うたフルやSD-Videoなどを再生できるプレイヤーは、プレイリストによる再生が可能で、早送り、巻き戻し、前後へのスキップ、ランダム再生、リピート再生などの機能が用意されている。ショートカットキー操作方法はカメラのファインダーと同じく、画面にガイダンスを重ねて表示することが可能だ。ただ、再生した状態でスライド式ボディを閉じたとき、前述の誤動作防止ロックを掛けていてもボタン操作ができてしまう。SD-VideoについてはDIGA DMR-E500Hなどで録画したSD動画、「SD-Movie Stage」や「MovieStage」など変換したASF形式のファイルを再生できる。SD-Movie Stageはアップデートされていないが、V601SHと同じ設定で、W22Hで再生可能なASF形式ファイルを生成することが可能だ。

 また、本体には着信などを知らせるLEDが装備されていないが、スライド式ボディの合わせ部分が光る「ルミナススリット」という形で実現されている。7パターンの着信LED色と10種類の光り方から組み合わせて設定できる。アドレス帳データごとに着信LEDの設定もできるため、特定の人からの着信を簡単に判別することが可能だ。


着信LED 光り方
 着信LEDの色は7パターン(OFFを含めると8パターン)から設定可能。通常着信以外にEメールやCメール、アドレス帳データごとに、個別設定が可能  着信LED設定では光り方も設定できる。フラッシュは点滅、フェードはゆっくりした点滅、グラデーションは連続的に色を変化させる

独特のボディスタイルが気に入れば「買い」

スライド

 スライド式ボディを試してみたいが、あまり極端な端末は避けたいユーザーにもおすすめできる仕上り
 最後に、W22Hの買いのポイントについて考えてみよう。au初のスライド式ボディを採用したW22Hは、その独特のボディデザインとスライド機構が魅力の端末だ。スライド式ボディは構造上、漢字変換を伴う国内向け端末になじまないと見る向きもあるが、W22Hは上下ボディの合わせ方や方向キー部分の角度、スライドアシスト機構などの工夫により、スライド式ボディを採用した端末としては現時点でもっとも使いやすい環境を実現している。デザイン的にも単純に板を2枚合わせたようなものではなく、閉じた状態を含めた存在感を考えてデザインされている。ロック機構の完成度が今ひとつなのは残念だが、カメラの画質の良さ(メガピクセルクラスとしては)や一連のカシオ製端末で培われたユーザーインターフェイスが活かされている点など、評価できる要素は多い。

 これらのことを総合すると、W22Hを「買い」と言えるのは、独特のボディスタイルが気に入ったユーザー、折りたたみデザインではないボディの端末を求めるユーザーということになる。スライド式ボディは構造的に注目を集めているが、実際に使ってみると、スライド部分の段差で文字入力が使いにくいなどの不満点も多い。しかし、W22Hはそういった不満点を最小限に抑え、使いやすいスライド式ボディの端末として仕上げている。スライド式ボディを試してみたいが、あまり極端なものは避けたいというユーザーにもおすすめできる。後発のW31SAやW31Sのような音楽再生機能はないが、基本的な部分の使い勝手はW22Hに一日の長があると言って差し支えないだろう。

 ところで、auは初のスライド式ボディのW22Hをリリースした後、この春、W31SAとW31Sの2機種が増え、一時的とは言え、スライド式ボディが合計3機種も店頭に並ぶことになった。ケータイのボディは変革の時期にあると言われているが、一気に3機種もスライド式ボディがラインアップされたのは、本当に良かったのだろうか。W22Hには直接、関係ないが、auの端末ラインアップ構成にはやや疑問符を付けたくる印象だ。



URL
  ニュースリリース(au)
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2004/1013a/
  製品情報(au)
  http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w22h/
  製品情報(日立製作所)
  http://www.hitachi.co.jp/Prod/vims/mobilephone/w22h/

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(法林岳之)
2005/04/19 12:30

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