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データ通信サービスで見えてくる各社のネットワーク事情
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 2月3日、UQコミュニケーションズはモバイルWiMAX(IEEE802.16e)を採用したブロードバンド通信サービス「UQ WiMAX」を発表し、いよいよ2月26日からサービスが開始された。イー・モバイルのモバイルデータ通信サービスをはじめ、NTTドコモやauによるデータ通信サービスの定額制導入、ウィルコムによる次世代PHSのWILLCOM CORE、昨年来のネットブックの人気など、モバイルデータ通信サービスを取り巻く環境がにわかに活気づいている。今回はパケット通信料の定額制を巡る動きから見えてくる各社のネットワーク事情について、考えてみよう。


なぜパケット通信が定額になるのか?

 読者のみなさんは月にどれくらいのパケット通信料を支払っているだろうか? 基本使用料+α程度? パケット通信料定額サービスの上限である約4000円強? フルブラウザを利用するから約6000円? あるいはそれ以上?

 少し古い話になるが、ケータイでパケット通信が身近になったのは、つい先日(2月22日)、ちょうど10周年を迎えたNTTドコモのiモードが開始された頃だ。それまでのデータ通信は主に回線交換による接続で、接続時間による従量制課金が採用されていたが、iモードでは当時はまだなじみの薄かったパケット通信を採用し、転送したデータ量による従量制課金を採用した。NTTドコモの携帯電話サービスがPDC方式のムーバだったため、1パケットあたり0.3円が課金されていた。その後、2001年に開始されたFOMAでは、周波数利用効率が向上したこともあり、1パケットあたりの単価は0.2円からの課金となり、パケットパックを組み合わせることで、月額8000円の固定料金で、1パケットあたり0.02円を実現した(参考記事)。しかし、それでもパケット通信の従量制という課金はなかなか理解されず、ユーザーが思っていた以上にパケット通信料が請求され、「パケ死」という言葉も生まれた。


2003年10月に行われた「CDMA 1X WIN」の発表会で示された、CDMA 1X WINの特徴

2003年10月に行われた「CDMA 1X WIN」の発表会で示された、CDMA 1X WINの特徴
 こうした状況を大きく変えることになったのは、2003年11月にauがサービスを開始した「CDMA 1X WIN」だ(参考記事)。CDMA2000 1xEV-DO方式を採用した同サービスは、ケータイとしては初めてパケット通信料を月額4200円(税別)定額で利用できる「EZフラット」を提供し、話題を集めた。

 このとき、当時の代表取締役社長である小野寺正氏(現在は代表取締役社長兼会長)は、その後のモバイルデータ通信の定額サービスを考えるうえで、非常に重要なことを述べている。同氏は発表会の質疑応答で定額制を実現できた理由として、EZフラットはau端末のみで利用したときに適用されるプランであるため、ユーザーが転送するデータの種類をはじめ、転送するファイルサイズをau側でコントロールできることを挙げている。

 このコントロールとは、端末レベルでの帯域制限をするという意味ではなく、メールの添付ファイルの容量を1通あたり150KB、EZムービーのダウンロードサイズを最大1.5MBまで、EZチャンネルで配信されるマルチメディアコンテンツが最大3MBまでといった具合いに、端末で扱うことができるファイルの種類やサイズを決めることで、特定のユーザーがネットワークに負荷をかけることを防ぎ、その結果として、パケット通信料定額サービスが実現できたことを意味している。

 もちろん、その背景には当時、最新だったCDMA2000 1xEV-DO方式の周波数利用効率の良さや定額制を実現するためのネットワークを構築したことなども関係するが、やはり、それ以上にユーザーがどの程度、使うのか(使っていいのか)を端末の仕様レベルでコントロールできることは、事業者として、非常に重要だったわけだ。


段階制定額から見えるネットワーク事情

 auに遅れること約半年、NTTドコモのFOMA向けに対抗サービスとして、パケット通信料定額サービス「パケ・ホーダイ」を2004年6月からスタートさせたが、当初は料金プランを月額6700円(税別)の「プラン67」以上を契約したユーザーのみに対象を絞る形を取った。実は、これもその後の同社の動向を占ううえで、NTTドコモのネットワーク事情が見え隠れする動きの一つだった(参考記事)。

 というのも、パケ・ホーダイのサービス開始から約2カ月後の2004年8月、auはEZフラットをベースに、二段階のパケット通信料定額サービス「ダブル定額」をスタートさせた(参考記事)。このダブル定額は各社が提供する段階制定額サービスの先駆けとなったが、NTTドコモは昨年10月の「パケ・ホーダイ ダブル」の提供まで、約4年近く段階制定額サービスを提供しなかった。というより、提供できなかったのだろう。


2004年8月に導入された「ダブル定額」で、通信量によって料金が変動する段階制が導入された (上のグラフは発表時のもの)
2004年8月に導入された「ダブル定額」で、通信量によって料金が変動する段階制が導入された
(上のグラフは発表時のもの)

 実は、NTTドコモは世界初の第三世代携帯電話サービス「FOMA」を開始するにあたり、高品質な通話サービスや通信サービスを提供するため、バックボーンも含め、非常に品質の良いネットワークを構築したと言われている。日本の電話サービスを支えてきたNTTグループの伝統を受け継いだ高品質なネットワークということなのだろう。しかし、高品質なネットワークによって、安定した通話や通信を実現できた半面、当然のことながら、ネットワークコストは総じて高くなってしまった。その結果、簡単にはパケット通信料定額サービスを提供することができず、当初はARPUの高いユーザーのみに提供する形を取らざるを得なかったわけだ。ちなみにパケ・ホーダイが契約可能な料金プランの制限の解除は、2006年3月まで待つことになる(参考記事)。


2004年の冬モデル「W21CA」は、フルブラウザを搭載していた

2004年の冬モデル「W21CA」は、フルブラウザを搭載していた
 対するauは元々、定額制を前提にCDMA 1X WINのネットワークを構築したと言われており、2004年8月のダブル定額の提供開始後、2005年5月からは最低利用料を引き下げた「ダブル定額ライト」も選択できるようにするなど、柔軟に料金プランを対応させている(参考記事)。

 ここで見え隠れする2社のネットワークコストは、フルブラウザ時代の動向にも反映されている。auは携帯電話初のフルブラウザとなる「PCサイトビューアー」を搭載した「W21CA」(カシオ計算機)を2004年12月に発売したが(参考記事)、当初はPCサイトビューアーによる通信を定額制の対象外としていた。

 しかし、発売から半年後、PCサイトビューアーのトラフィックがある程度、見えてくると、2005年5月からはPCサイトビューアーでの利用についてもダブル定額やダブル定額ライト、パケ割ミドル、パケ割スーパーを契約していれば、パケット通信料の上限額を5985円とする施策に切り替えた。現在でも各社が標準的に採用しているが、いわゆるフルブラウザを含めた「三段階」化を実現したわけだ(参考記事)。


 これに対し、NTTドコモは2005年6月に発売した「N901iS」(NEC)で初めてフルブラウザを搭載した(参考記事)。当時の発表会では「将来的にフルブラウザの定額化はあり得るかもしれない」としながら、実現は2007年3月開始の「パケ・ホーダイフル」を待たなければならなかった(参考記事)。しかも「パケ・ホーダイフル」は月額5985円の固定料金で、「パケ・ホーダイ」とは別のパケット通信料定額サービスとして、提供された。つまり、パケ・ホーダイフルを選んだ場合、フルブラウザを使わず、iモードブラウザしか使わなくても毎月、5985円が請求されたわけだ。

 これは筆者の推測でしかないが、ユーザーからのフルブラウザに対するニーズは高かったものの、FOMAの高品質なネットワークが高コストであったため、なかなか採算の取れるプランが作り出すことができず、auや当時のボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)との対抗策上、営業的な判断として、iモード用とフルブラウザ用の二本立ての定額サービスを作らざるをえなかったのではないだろうか。

 そして、2008年10月、NTTドコモもいよいよ段階制のパケット通信料定額サービス「パケ・ホーダイ ダブル」、スマートフォン向けの「Bizホーダイ ダブル」をスタートさせ、それまで提供してきた定額制の「パケ・ホーダイ」「パケ・ホーダイフル」、パケット通信料割引サービスの「パケットパック10」「パケットパック30」を2008年12月いっぱいで新規受付を終了している(参考記事)。


ドコモは、2008年10月より「パケ・ホーダイ ダブル」の提供を開始した
ドコモは、2008年10月より「パケ・ホーダイ ダブル」の提供を開始した

拡大するユーザーの利用

 ここまではパケット通信料定額サービスの動向から各社のネットワーク事情を推測したが、2003年11月の定額制開始から5年が経過したことで、ユーザーの利用環境も大きく変化し、料金面以外でも各社のネットワークに対する対策が見えてきている。

 たとえば、昨年10月からauが実施している夜間の「EZweb通信制限」が挙げられる(参考記事)。詳しくは昨年9月に掲載されたインタビュー記事『KDDIに聞く〜EZweb通信制限は「品質向上に向けた取り組みのひとつ」』を参照していただきたいが、実はここ数年、ケータイのデータ通信量は急激に増え、各社の携帯電話ネットワークへの負荷が一つの問題となってきている。

 どうもユーザーとしては「通信制限」と聞くと、「定額サービスを提供しておきながら、使えなくするのか?」と反応してしまいそうだが、対象となるのは前々月の月間パケット通信量が300万パケットを超えるユーザーで、実際に制限されるのは全契約者の約1%程度でしかなく、時間帯も通信や通話などのトラフィックが多い21時から翌1時までとなっている。つまり、大半のユーザーにとっては自らが制限を受けるというより、制限の導入によって、安定した通信・通話環境を享受できることになる。


 auをはじめ、各通信事業者では前述のように、転送できるファイルの種類やサイズを端末の仕様レベルでコントロールしてきたが、それでも月に数百万パケットを超えるようなユーザーが現われ、こうしたユーザーが同じ基地局下で利用すると、他のユーザーの利用に影響を与えてしまうため、こうした制限を始めざるを得なかったわけだ。

 同様の制限はNTTドコモも2004年の「パケ・ホーダイ」開始時からネットワークの混雑状況を踏まえて実施してきたが、今年1月の「パケ・ホーダイ ダブル」の改訂に際し、今後は「通信量の多いごく一部のユーザー」についても通信速度を制限することを明らかにしている(参考記事)。auのように、具体的な基準は提示していないが、おそらく想定するユーザーの利用環境は同様で、「パケ・ホーダイ ダブル」などのパケット通信料定額サービスを契約しているユーザーの内、特に利用の多いユーザーについてはネットワークの混雑している場所や時間帯において、通信速度を制限することで、他のユーザーが快適に利用できる環境を維持できるようにしているという。

 ちなみに、NTTドコモは2007年からパソコンを利用してのモバイルデータ通信サービスを定額で利用できる「定額データプラン」(参考記事)、昨年9月からは2年間の契約を約束することで月額利用料金を上限を抑えられる「定額データ割」を提供している(参考記事)。


ドコモのデータ通信プランでは、2年契約を前提にした「定額データ割」が2008年9月より提供されている
ドコモのデータ通信プランでは、2年契約を前提にした「定額データ割」が2008年9月より提供されている

 前述の流れから考えると、FOMAの高品質なネットワークでは通信コストが高くなるため、パソコンを接続しての定額サービスの提供は難しいはずだが、2007年春に開業したイー・モバイルの対抗上、定額サービスが必要になったこともあり、提供に踏み切ったようだ。しかし、闇雲に定額サービスの提供に踏み切ったわけではなく、2007年春頃にはある程度、コストダウンができたネットワークへの切り替えもできていたようで、前述のように、端末で利用するフルブラウザ対応のパケット通信料定額サービスの「パケ・ホーダイフル」は2007年3月から提供が開始されている。

 これに加え、NTTドコモが提供するモバイルデータ通信サービスでは、利用できる通信アプリケーションの種類(プロトコル)を制限することで、ネットワークへの負荷を抑えている。具体的にはWebページの閲覧やメールの送受信、FTP送受信などは利用できるが、一部のストリーミング再生やP2Pによるファイル交換、パソコン向けオンラインゲームなどは利用することができない。かつて、端末の仕様によって、定額制を実現してきたときと同じように、パソコンを接続しての用途を制限することで、ネットワークへの影響を抑えようとしているわけだ。


2008年冬モデルの「W64SH」。最近の一部au端末では、パソコン接続時の定額データ通信もサポート

2008年冬モデルの「W64SH」。最近の一部au端末では、パソコン接続時の定額データ通信もサポート
 また、モバイルデータ通信サービスについては、auも2007年末からデータ通信用端末「W05K」を発売し、専用料金プラン「WINシングル定額」とともに提供を開始している(参考記事)。auのモバイルデータ通信サービスは通信プロトコルやアプリケーションによる制限こそないものの、端末のW05Kにはあらかじめトラフィック制御機能が搭載されており、周囲の回線が混雑している環境下では自動的に通信速度が制限されるしくみとなっている。

 この機能は2008年冬モデルのW63CA、W63H、W64SHに受け継がれ、これらの機種では「ダブル定額ライト」「ダブル定額」「パケット割WINミドル」「パケット割WINスーパー」の契約者を対象に、パソコンと接続してのモバイルデータ通信を1万3650円の上限額で利用できるサービスを提供している(参考記事)。2009年春モデルでもPremier3、CA001、H001、S001、P001、SH001、T001の7機種が同サービスの対応機種に挙げられているが、やはり、同様にトラフィック制御機能が搭載されていることになる(参考記事)。


見え隠れするソフトバンクのネットワーク事情

 各携帯電話事業者はタイミングや内容こそ違え、何らかの形で「スーパーヘビーユーザー」の利用を制限し、ネットワークの品質を保とうとしてきたが、ここ数年の変化をもっとも具体的に述べた例もある。


ソフトバンクモバイルCTOの宮川氏(写真:2008年11月、総務省公開ヒアリングのもの)

ソフトバンクモバイルCTOの宮川氏(写真:2008年11月、総務省公開ヒアリングのもの)
 昨年11月、総務省で行われた「3.9世代移動通信システム及び2GHz帯TDD移動通信システムの導入に係る公開ヒアリング」の席において、ソフトバンクモバイル取締役専務執行役員兼CTOの宮川潤一氏は「2006年にボーダフォンを買収したとき、月間1000万パケットは1〜2人だったが、先月(2008年10月)の時点では、平均の数百倍に相当する1億パケット以上のユーザーが100人を超えている」とコメントしている(参考記事)。「約5万パケットで定額制上限になるが、トラフィックを増やさず、いかにうまく料金をいただくかを検討しているところ」と付け加えたが、iPhone 3Gを導入し、Xシリーズなどのスマートフォンを積極的に展開している同社でもネットワークがかなり厳しい状況にあることをうかがわせる。

 もっともソフトバンクの場合、自社で一から携帯電話のネットワークを構築したわけではなく、旧ボーダフォンが構築したネットワークを受け継ぐ形になったため、必ずしも自社が思い描いた環境が構築できているわけではないようで、そのジレンマも宮川氏の発言に結びついているのかもしれない。もし、それだけネットワークの設備や品質に疑問が残るのであれば、昨年、同社がiPhone 3Gを導入したことがやや無茶な取り組みとも言えるのだが、やはり、現在のソフトバンクにとっては、とにかくユーザーを獲得することが至上命令だったからだろう。

 昨年の動向を見てきた読者なら、おわかりだろうが、iPhone 3Gは当初、月額一律5985円の「パケット定額フル」への加入が必須とされていた(参考記事)。しかし、iPhone 3G発売のわずか1カ月後の2008年8月には早くも月額1695円〜5985円の二段階制へ移行し(参考記事)、2008年12月からはiPhone 3Gのユーザーを対象に、公衆無線LANサービス「BBモバイルポイント」の無償提供を開始している(参考記事)。


iPhone 3G

iPhone 3G
 これは言うまでもなく、段階制定額の導入でiPhone 3Gユーザーに節約を促すことによって、ネットワークのトラフィックを抑え、公衆無線LANサービスを無償提供することで、無線LANネットワーク側にトラフィックを逃がすことを考慮した施策だ。

 iPhone 3Gは元々、インターネットとの通信もパソコンで利用するインターネット接続とほぼ同じレベルのものであり、今まで同社が展開してきたXシリーズなどのスマートフォン(Windows Mobileや一部のノキア製端末など)と比較してもトラフィックが多いと言われている。ソフトバンクとしては、iPhone 3Gという魅力的な武器でユーザーを獲得したいが、ネットワークへの負荷は何とか抑えたいというジレンマが見え隠れする動向だ。

 ちなみに、iPhone 3Gにはソフトウェア的な改造を加えることで、指定外の利用を可能にする手法が世界的に明らかになっているが、日本において、こうした改造を施したiPhone 3Gが大量のトラフィックを生み出すようなことになると、ソフトバンクもiPhone 3Gに対して、帯域制限などの対策を取ることになるかもしれない。

 また、ソフトバンクについては、NTTドコモやauと違い、今のところ、パソコンを接続しての定額制モバイルデータ通信サービスを提供していない。他社の例を見てもわかるように、モバイルデータ通信サービスは当然のことながら、ネットワークへの負荷は大きい。iPhone 3Gという端末ですら、何とかトラフィックを抑えようとしているソフトバンクにとって、定額制モバイルデータ通信サービスはかなり無理のある取り組みとなる。だからこそ、同社はイー・モバイルとの提携に踏み切り、MNO(移動体通信事業者)によるMVNO(仮想移動体通信事業者)参入をアナウンスしたわけだ(参考記事)。ここにもソフトバンクの苦しいネットワーク事情が浮かび上がってくる。


ウィルコムは、2009年1月に行った新機種発表会で、次世代PHSを利用したサービス「WILLCOM CORE」について、3Gなどを含めたさまざまな通信手段を提供する方針を示した

ウィルコムは、2009年1月に行った新機種発表会で、次世代PHSを利用したサービス「WILLCOM CORE」について、3Gなどを含めたさまざまな通信手段を提供する方針を示した
 同様の動きは、2.5GHz帯で次世代PHSの免許を受けたウィルコムにも見え隠れする。まだ正式なアナウンスは何もないが、ウィルコムはNTTドコモのFOMAネットワークを借り、モバイルデータ通信サービスを提供するのではないかと報じられている(参考記事)。ウィルコムは今年から次世代PHS「WILLCOM CORE」のサービスを開始する予定だが、基地局をはじめ、設備は既存のPHSサービスとは別に構築していかなければならないため、都市部以外はどうしてもすぐにエリアを拡大することができない。そこで、エリアが拡大するまでの間、NTTドコモのFOMAネットワークを借り、エリアを補完する形を取ろうとしているようだ。モバイルデータ通信サービスの市場を切り開き、2.5GHz帯の免許を受けたウィルコムですら、現在のインターネットの利用環境の変動には、すぐに対応しきれないというわけだ。


 さて、これら3社に対し、同じ携帯電話サービスを提供するイー・モバイルはどうだろうか。同社も他社同様、パケット通信料の段階定額制を採用しているが、他社と違い、音声端末でもデータ通信端末でも同じように定額で利用できることをアピールしている。アプリケーションによる制限もなく、ある程度、自由に利用することができる。これはイー・モバイルが新規参入事業者であるため、ネットワークの構築がもっとも新しく、設備も新しいことが関係している。同時に、契約数も順調に増えてきているものの、2009年1月末現在で119万であり、5000万を超えるNTTドコモ、3000万を超えるau、2000万を超えるソフトバンクに比べれば、ネットワークへの負荷もそれほど深刻ではないことがうかがえる。

 ただ、イー・モバイルは他社に比べ、割り当てられている周波数帯域も少ないため、スーパーヘビーユーザーの利用が顕著になってきてしまうと、何らかの制限を加えることになるかもしれない。あるいは、500万、1000万契約を達成した時代に、今と同じ品質を維持できるかどうかは未知数だ。昨年来、家電量販店の店頭ではネットブックと同社のデータ通信アダプタを組み合わせて販売する「100円PC」が人気を集めているが、これを契約したユーザーがライトユーザーであれば、ネットワーク的な問題は起きなさそうだが、なかには自宅に固定のブロードバンド回線を持たず、自宅もモバイル環境もイー・モバイルの回線のみでインターネットを利用するユーザーが現われてきており、『明日のスーパーヘビーユーザー予備軍』が着実に増えつつあるという見方もできる。ユーザーの動向も含め、今後が気になるところだ。


効率的なネットワークを巡る各社の攻防

 ここまで説明してきたように、現在、各携帯電話事業者のネットワークは、ユーザーの利用が急速に拡大したことにより、各社は今まで以上にネットワークを効率良く構築し、運用することを考えている。しかし、現世代のサービスについては徐々にその飽和点が近づいており、現状のサービスをうまく活かしながら、次なる世代への模索が始まろうとしている。携帯電話サービスで言えば、LTEがその本命であり、国内ではウィルコムによる次世代PHSということになる。


いよいよスタートするUQ WiMAX

いよいよスタートするUQ WiMAX
 そして、2月26日、UQコミュニケーションズによる国内初のWiMAXサービスである「UQ WiMAX」がいよいよ開始された。UQ WiMAXは携帯電話サービスというより、インターネットに接続するための『モバイルネットワークサービス』という位置付けになるが、今後のモバイル環境では一つの台風の目になることが予想される。

 単純に端末や料金プランだけを比較すると、機能の搭載/非搭載、料金の高い/安いなど、直接的に見える部分ばかりに目が向いてしまう。よく「木を見て森を見ず」というが、実は各社のプランや対策の全体を見渡してみると、各社のネットワーク事情や問題点が少しずつ見え隠れしてくる。同時に、パケット通信については、「パケ代は定額だから、好きなだけ使いまくればいい」という考えもユーザーの間に生まれつつある。市場原理に基づけば、確かにそれもひとつの考え方なのだが、かつてのインターネットがそうであったように、そろそろ携帯電話やモバイルデータ通信サービスは「共有して利用している」ということを意識しなければならない時期を迎えているのかもしれない。



URL
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/
  au
  http://www.au.kddi.com/
  ソフトバンクモバイル
  http://www.softbankmobile.co.jp/
  イー・モバイル
  http://emobile.jp/
  ウィルコム
  http://www.willcom-inc.com/
  UQコミュニケーションズ
  http://www.uqwimax.jp/



(法林岳之)
2009/02/26 10:57

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